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太宰とルノワールの『ジャンヌ・サマリーの肖像』



太宰image


私たちも人生の壁に遮られた時、いっそう孤島にでも逃げたいと感じる時、太宰の文章の巧妙な魔力が私達読者の悩みを解決したかの錯覚を覚えさせるのが「太宰文学」と思うのである。

昭和の暗い谷間の時代に生き、一人で命懸けで文学と死闘してその時代の苦悩を人間の本質まで掘り下げた哀切な作品が若い心をとらえて離さないのだと思う。

太宰は当時の文壇に一人で挑戦状をつきつけた孤独な戦士なのです。 太宰は生と死のギリギリのところで書いている。だから、今も読むと不思議な感動を与えてくれるのだと思う。

太宰は既成の小説は「教科書的な嘘の道徳観だと」強く嫌悪感を抱いていたのです。特に戦後に、昨日までの国家主義者が、一夜にして自由主義者に変貌する文壇にも強い虚偽感を見出したのである。古い道徳と戦い自らは「捨石」となったともいえるのです。

だから、死の直前「如是我聞」で志賀直哉に対し、驚くべき毒舌を吐いたのだです。「暗夜行路」がどこが苦悩だと言うのだ。「大袈裟な題を付けたものだ。この作品のどこに暗夜があるのか。それは嘘で、甘い家庭生活、安易で楽しそうな生活が魅力になっているらしい」と感情の異常な塊りなのです。学習院出の志賀直哉の「自己肯定のすさまじさ」に捨て身の挑戦を挑んだのです。そしてさらに「重ねて問う。世の中から、追い出されてもよし命かけて事を行うは罪なるや」「最後に問う。弱さ、苦悩はつみなりや」と激しく攻撃したものの、彼は「どうにも負けそうで、心細い」となることがしばしばあった。
太宰中期の作品は戦況が悪化して行く時代であまりリアルな作品が書きににくい時代でもあり、「新ハムレット」「駆込み訴え」「走れメロス」等のパロディ作品が増えてくるのですねー。古典、史実、狂言等を土台として滑稽、風刺のきいたものだがきわめて明るく健康的作品である。1945年の「お伽草紙」が最もパロディ作品で太宰の縦横無尽な想像力を発揮された(虚構)(道化)の本格作品であった。しかし、世間で指弾され、嫌われ、批判されているこの文学手法に対し物質上の豊かさより、精神の豊かさを良しとし、「精神の貴族」。心の王者たらんと進んでいくのである。戦後の自伝的告白作品の三部作「ビヨンの妻」「斜陽」「人間失格」も「精神の貴族」をテーマとしていると思う。その精神が「如是我聞」にまで引き継がれ物質中心の功利主義、専ら真面目に生活する現実生活への批判ともなっていくのである。

そして自らの生が最大の危機に直面している事を悟り、苦悩に満ちた前半生を、文学作品として造形し、自己の過去を振り返って検討し直し生まれた作品が(人間失格)なのです。
いわば、精神の自叙伝でもあるのです。文字通り人生の敗北者の受難の記録でもあると思うのです。

ところで、このプーシキン美術館でのルノワールの『ジャンヌ・サマリーの肖像』と隣の「斜陽」のヒロインかず子のモデル太田静子の肖像画はどこか、タッチが似ているとは思いませんでしょうか?‼
昭和16年太宰が32歳の時に静子(27)は二人の女性と太宰の家を初めて訪れた時の顔を描いたものである。太宰は不在であったが、煙草をふかしながら帰ってきた。妻美智子と生まれたばかりの長女園子がいる家庭だったので、いくら愛想の良い太宰でもあまり歓迎はできなく静子は淋しく帰ったのでした。その後も密かに文通をし、昭和22年2月、神奈川県下曽我に住む太田静子を訪ね、一週間ほど滞在した。その時身籠もってできた子供が作家太田治子である。
太宰はあらゆる知識を自分の頭脳に蓄え「何でも天才」と言われる作家であり、油絵にも通じていた。子供の時は美術家志望だったのです。パロデイ作家とも言われる太宰が構造をまねて、その時の淋しい静子を哀しく描いたものと思うのです。静子は後で見せられた時「変な顔ですねー」と語っている。太宰は「本当に泣きそうだったのだも・・」と返答している。
真似だと思うのはあくまで、私個人の勝手な想像にすぎません。笑)

太宰は自分の自画像も描いている。彼の作品すべてが自画像ともいえるのである。
          
「お伽草紙」

「瘤取り」「浦島さん」「カチカチ山」「舌切雀」の四編を収めた短編集です。
物語作者の太宰の非凡な才能が、見事に開花した、よく知られたお伽噺であり、
その素材に奔放自在な空想力を駆使してさまざまに肉付けし、新しい解釈や独特の教訓を加えて
、だれしもが楽しめる物語とする事に成功している。

当時の彼は、空襲、疎開で虚無感や空白感を抱きはじめていたが、この作品は明るく優れた作品である。
国策文学がはやる中、谷崎潤一郎の(細雪)が掲載中止となったり、筆を折る文学者が出た時代であった。

そんな「ひどい時代」の中で太宰は「この際、読者に日本の作家精神の伝統とでもいうべきものをはっきり知って」
頂きたい。という意識を最大の支柱として書き続け自らの芸術の完成を唯一の目的として精進していたのです。
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コメント

竹林乃方丈庵 さんへ!!


こんにちは!
恐縮でございます。汗)
志賀直哉への反発は聊か最後の自棄のやんパチ的な要素が感じられますねー。

purotoko さんへ!!こんいちは!


こんにちは!
太宰文学は文体が優しいので読みやすいですねー。!
実家から毎月90円もの仕送りを受けていましたが周りの関係者に毎日のように湯水のごとく
振舞っていました。病気を悪化させた一因でもあります。汗)
それらとは直接無関係ですが、文学的には聖書を良く読んでいたせいか(心の豊かさ)を重んじていた様です。
作品は虚構が多く戯作派と言われる所以でもありますね^^。

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No title

志賀直哉に対しの毒舌のお話など、いろいろと教えられ勉強になります。

No title

太宰の文学については詳しいことはわかりませんが、太宰文学として好きですね。太宰は物の豊かさより心の豊かさを求めたのでしょうか?

華やぎ さんへ!!


おばんです!
本当に、太宰は実生活の方が面白いかもしれませんですね^^。

だから彼は自ら戯作派の男を演出したのでしょうねー。!

虚構は小説家だけに許されるべきで、政治には無理だと思います。

しいて言えば、 平成の太宰は安倍総理と言う事かもね^^。!

小説


事実は小説よりも奇なりで~

嘘のような、本当の話もあるのですね。

フィクションも、社会を映し出す「鏡」なのかもしれません。

平成の太宰は、誰なんでしょうね?

NANTEI さんへ!!


おばんです!
太宰は中学の時、真剣に画家を目指していた事は事実のようでしたので、このよな想像を致したものです。笑)
従兄弟にも画家もいますし・・・

NANTEI さんの友人のお話を聞けば、なるほどと思いました。!少し可愛らしすぎますものね^^。
太宰と言う人の才能は恐るべきものと思いますねー。
(才におぼれる)と言う事もありますが、彼は都会にも田舎にも住めない孤独な運命を抱えた作家だと思いますねー。涙)
素敵なコメントをいただき、感謝いたします。!

まり姫 さんへ!!♪

おばんです!
昨夜は大変でしたねー。お見舞い申し上げ致します。!
太宰は前期の文学で芥川賞落選をした事が終生響いたように思いますねー。
川端康成に「生活の暗い影がある・・云々」以来長老文壇に反感を抱いたのではないでしょうか?!
近所の亀井勝一郎や奥野健男等は絶賛していますが<>様々な受け止め方があるものですね(*^^)
その通りだと思います。「斜陽」でさえ若い読者に人気を博しましたが、文壇からはあまり認められませんでしたねー。泣)

こんにちは!

さすがは、ダザイストでございますね!

太宰治がこのようなスケッチを残していたこと、
全く知りませんでした(汗!

なるほど美術も志していたことがあるのですね。
私の拙い目で見ましても、
この絵は決して模倣ではないと思います!

人間の内面を抉る達人が似顔を描く時、
素人であってもそれはそれは恐ろしいほどの絵を描くものです。

私の友人にも文筆で暮らしている男がいますが、
彼の似顔絵もまたイヤらしいほどその心性を抉っていて、
恐ろしくなったことがありました。

ましてや太宰治という天才のこと、
これは彼にしか描けない作品と信じます!

それにしても鷹虎さんならではの太宰論。
いつも心して拝読しております。





No title

鷹虎さんこんにちは~♪
太宰に傾倒している鷹虎さんの思考がそのまま出ていますね(*^^)
私は太宰文学をそれほど深く探求していないので、評価基準も今の段階では明確にできません^^
今、当時の文芸評論家が書いた文芸評論集を読んでいるところです。
様々な受け止め方があるものですね(*^^)

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    プロフィール

    荒野鷹虎

    Author:荒野鷹虎
    何時までも心は若者でありたい!。
    (男性)道産子、AB型

    熱烈な阪神ファン。
    囲碁・将棋の大フアン、スポーツ大好き、
    太宰治に傾倒、自らも人間失格を自称、クラシックも好き、気の多い多趣味な、多酒味男、政治の腐敗に喝!

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