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太宰の「斜陽」と太田静子の「斜陽日記」

 静子と太宰太宰と静子  

大田治子  太田治子  下曽我の山荘
                           下曽我の山荘の入り口

東日本大震災は、終戦後の焼け野原に似ています。
秋の夕日の戦後から復興を遂げ、今又、震災後の奈落から新しい春の朝日を望み逞しく立ち上がろうとしています。此処に戦後、文学界の「苦悩の旗手」として東北出身の作家太宰治の作品を紹介し、「祈り」を捧げたく思います。



 確かNHKで【斜陽】のドラマの放映があると記憶しているが、中々実現しません。
女優の佐藤江梨子さんが「かず子」役らしいが、顔のえらが張っているところは、実在した斜陽のモデルとされる太田静子さんに良く似ています。太宰フアンの私は、「斜陽」と言う作品がどのように、描かれるか大いに興味があるのです。

(小説のあらまし)
「 斜陽」は昭和22年(1947)。戦後、没落貴族の母とかず子は伊豆の山荘で暮らしていた。
弟の直治が復員、母は病で死ぬ。彼女は戦前口づけされた弟の師の作家上原に会う。弟は自殺する。
ある日、上原を訪ねたかず子は結ばれて懐妊する。荒廃した姿の上原に旧道徳とたたかう犠牲者を感じた彼女は、【今の世の中で、一番美しいのは犠牲者です。恋しい人の子を生み、育てることが、私の道徳革命なのでございます】と書き送る。(序章は、太田静子の「斜陽日記」を下に、記述され、戦時中の母と出戻り娘のかず子の生活が描かれ、太宰のことは2度ほどしか触れていません、やや退屈な感じがします。そっくりな内容ですが、その後は太宰の創作とされている。「斜陽日記」の本になるメモ・ノートも存在しています。)

(太宰と静子の出会い)
 1941年(昭和16年)9月静子(27)は友人と太宰家を訪れる。「日記を書きなさい」とすすめる。その後、静子は盛んに、太宰に愛の告白の手紙を送り、太宰も次第に恋に落ちたのか、妻への気使いで偽名まで使い、文通を重ねる。太宰(35)が初めて下曾我に来たのは昭和19年1月で、小田原駅で太田静子と待ち合わせ、小田原の小澤病院に入院していた太田静子の母親を見舞った後、下曾我に向かいます。太宰の二度目の下曾我訪問は戦後の昭和22年2月、日記を借りるためでした。しかしこの時太田静子は身ごもります。この年の11月に太田治子誕生(作家)
この頃、山崎富栄と知り合い、妻の津島美知子との三つ巴の女関係で疲労も激しくなっていく。


野原一夫の「回想 太宰治」では「コスモスですこし飲んでから、太宰は、なんの用事があってか、近くに住む亀井勝一郎氏の家に静子さんを連れて行った。亀井氏と同道してコスモスに引き返し、スタンドに腰かけて一緒に飲んだ。……火の気のない小部屋の、壁を背にして立ったまま太宰は、畳に坐ってうつむいていた静子さんに、日記を見せてくれないか、重い口調で言った。静子さんは、急にあたりが白っぼくなり、からだがすとんと落ち込んでゆくような気がした。日記のために、そのために、まさか、そんなことが。こんど書く小説のために、どうしてもきみの日記が必要なのだ、と太宰は、顔の筋ひとつ動かさず、突きつけるように言った。小説が出来上ったら、一万円あげる。下曾我に来て下さったら、日記はお見せします、静子さんは低い声で答えた。」と書いています。この日記の話を受けて太宰は2月に下曽我にいく訳です。

 このように、太宰文学では、珍しい、ロマン中編小説といえます。最初は「斜陽日記」を元に、戦後、農地改革で、斜陽化した没落貴族のことを書こうとしたのでしょうが、静子から妊娠を告げられ、後半、弟の直治が麻薬中毒で破滅し、自身を戯画化した流行作家の上原を登場させ四人四様の滅びの姿を描くことに構想が変化したのではと思っています。勿論、女主人公「かず子」もほかの3人も、太宰の分身で、敗戦によってもなんら変わらない、エゴイズム、けち臭さ、古さに、絶望する。そして自分の中にあるそれらを、抉り出し、批判、否定することによって世の、悪、偽善を撃ち既成道徳を転換し「家庭の幸福は諸悪の本」(家庭の幸福)「子供より親が大事」(桜桃)「義のために遊ぶ」(父)などと、自虐的に読者に語りかけ、「かず子」に恋と革命のために、不倫の子を産み一人で、子供を育て生きようとする強い女の姿を描き、戦争期を生き抜いた太宰の生き方が投影されているのである。自身は津軽の、大地主と言う誇りと名も無い高利貸しとのジレンマに陥り6男坊として当時の家父長制度では、いわば、余計者としての疎外感にさいなまされ
無類の「優しさ」と「羞恥心」のために、生涯、5度の自殺未遂を繰り返し絶望の淵から、「生きる」事への、希望と不安を謳い上げた劇的な生涯であった。「静子の日記」での(あとがき)太宰が富栄と入水自殺した後)でも、「太宰はきっと生きたかったのではないでしょうか、斜陽と言う作品は太宰の苦しい生涯の黄昏になった」と書いている。だから、戦後の荒廃した中で、読者が「斜陽」に自分を重ね、熱烈な人気を呼び一躍、一流行作家となるのである。
太宰の生活は堕落したものであったが、余りにも、弱さ=優しさが周囲の生活に耐えられなかったのだと思う。次々と裏切られ生きるすべをこの世には見つけることが出来なかったともいえます。

 最後の、かず子の上原への手紙で、「恋しい人の子を産み、育てることが私の道徳革命の完成なのです。私生児と、其の母。けれど私たちは、古い道徳とどこまでも争い、太陽のように生きるつもりです」とあるが、これは、静子への、そのように生きてくれと言う太宰のメッセージなのだとおもう。
現代では、未婚の母が大勢生きていて奇しくも「かず子」の願いは達せられたかのようである。           
太宰治(だざいおさむ)の中編小説。敗戦後の1947年(昭和22)に発表され、ベストセラーとなり、敗戦によって没落した貴族をよぶ「斜陽族」という流行語を生んだ。母は最後の貴婦人として美しく死に、弟直治は生きる基盤のない貴族であることを嘆きつつ自殺する。1人残ったヒロインかず子は「人間は恋と革命のために生れて来たのだ」と、画家上原の私生児を身ごもり、道徳革命の完成を目ざして生きる。戦後の農地改革による太宰の生家津島家の没落が、日本の『桜の園(その)』を書こうという動機となったが、さらに太田静子のノートを手に入れて構想が定まった。滅亡への挽歌(ばんか)が第一主題で、それに比べて第二主題のかず子の道徳革命は観念的で弱いとされている。
(小学館全科より)

太田静子)
1913年、滋賀県生まれ。実践女子専門学校中退。新短歌グループに参加、口語歌集「衣装の冬」刊行。太宰治との間にもうけた治子を未婚の母として苦労して寮母をしながら育て、1982年没。彼女も太宰と知り合う前に、子供を一人(満里子)を夭逝し、離婚暦有り。心の深い傷となる。

太田 治子(作家)

神奈川県小田原市生まれ。明治学院大学英文科卒。
1976~79年、NHK「日曜美術館」司会アシスタント。
1986年 「心映えの記」により第1回坪田譲治文学賞受賞。
2007年 NHKカルチャーアワー文学の世界「明治大正昭和のベストセラー」担当。
2008~10年3月 NHK「ラジオ深夜便」の「私のおすすめ美術館」担当。
主な著書に「絵の中の人生」「青い絵葉書」(新潮社)「恋する手」(講談社)「小さな神様」
「明るい方へ」(朝日新聞出版)「石の花-林芙美子の真実」(筑摩書房)など。
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コメント

dio 殿!!

 先日は、楽しい電話ありがとうございました。!
私だって、普段は、全部は見せないのです。笑)

男も裏と表がありますかね^^汗)
全国共通話題の下世話な話が、無難ですからね~^^

21日は残念ですが、胃腸内視鏡検査で、無理です。
別な日を設定お願いいたします。!

今日病院で、余り痩せたので、先生も、驚き、「節食を考え直し、少し常食にしようか」と言い今夜早速、ビール、2本飲みました。おかずも、普段の、2倍くらいたべました。。。宜しく!専務に特に。!!

鷹虎殿!

 しばらくでした!
いよ~いつの間にか、文学青年になったのかねー・w
ま^^飲平で、放蕩なところは似ているかな^^

緊急連絡)
21日あそこで、一杯、専務も。

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華やぎさんへ!!

 大和歌は良いことを言っているようですが、高校生のときも分からずじまいでした。汗)

太宰も「生と死」の狭間で苦悩したのですねー。新しい道徳、倫理を作るには、犠牲が必要なのですかね^^汗)
黄昏も美しいものです。!

 原発は予断が許されませんが、今後の、エネルギー政策の再考を強いられそうですねー。!

SARA―BONさんへ!!

こんにちは!
おかやま弁でしたか?! 方言って味わい深いものですね~^^
流石に、道産子は、使わないですね~^^

「なまら」が使いやすいです・・・笑)

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滅びの美学

生きとし生ける者の定めですね。

『花に鳴く鶯、水にすむ蛙の声を聞けば、生きとし生けるもの、いづれか歌を詠まざりける』

紀貫之の歌だそうです。

いつの時代も、喜怒哀楽の中に生き様が在るような~

東日本大震災は、時代の大きな転換点になると思います。

こんばんはー

いつも見に来て頂いてありがとうございます。

ぼっけぇの意味ですが、すごいと同じ意味ですね
(^ー゚)ノ
バリバリの岡山弁です!!良かったら使って見て下さいねe-68

りんだ さんへ!!

 太宰文学は青春文学なのでしょうか、大抵若い、学生時代に読んだと言う人が多いですねー!

 私もそうでしたが、年配になってからの太宰も又何となく面白く読めますねー。

もうこの大震災で、「戦後」は終わりましたねー。「震災後」と言う新しい時代が来るのでしょうねー・価値観も変わり、大きな転換期を迎えたように思いますねー。若い人が自ら選択していくべきと思います。

日本人の粘りと、辛抱強さは必ず長い月日をかけてでも、復興されることでしょう!!

No title

太宰治は 昔々 人間失格 走れメロスくらいしか読んでません。
斜陽も読んでみたくなりました。
・・東日本大震災は、終戦後の焼け野原に似ています・・・・言われてみれば今TVに映し出される映像は戦後のいろいろな書物に出てくる何もない本当に焼野原のようですね。
あれから復興するのにどれくらいかかったことか。
きっと今回の震災も長い年月がかかるでしょうが きっと復興すると信じて皆で頑張ってやっていかなきゃいけませんよね。

てのりぱんださんへ!!

 いまだに、太宰文学は人気がありますね~^^
苦労された、奥様の亡くなった時の総遺産が9億円もあったそうです。
生前は借金ばかりでしたが、やはり優しい男でしたね~^^笑)

私も、入院中に書棚に在ったので、数年ぶりに、熟読できました。
若いとき読んだときと違い太宰の内面の「苦悩」が伝わってきました。
「静子の斜陽日記」は聊か複雑で、自分のメモ書きを太宰に謂れて、本を刊行するべく改めて作品化したように思います。現に太宰死後直ぐ一度刊行しました、しかし、圧力があったのか、直ぐ差し止められています。

娘さんの治子さんの記述に拠れば、太宰への熱愛の書簡は恥ずかしくて読めなかったと言っています。
弱い女では在ったらしいですが、恋には大胆な女性だったのですねー!

是非、もう一度精読されることをお勧めいたします。(免)
コメント大変感激いたしました。!ありがとうございます。!

No title

おととし、生誕100年ということで図書館に行きますと、「太宰コーナー」がつくってありました。『人間失格』が映画化されていましたね。あのとき以来太宰は全くよんでいませんでした。
たしか、『斜陽』は静子の日記とチェーホフをもとにかかれているんですよね。学生の時よんだきりでわすれてしまっています・・・。
鷹虎さんが書かれている記事で、背景に戦後の世相が影響しているのがよくわかります。
また読んでみたくなりました。
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    プロフィール

    荒野鷹虎

    Author:荒野鷹虎
    何時までも心は若者でありたい!。
    (男性)道産子、AB型

    熱烈な阪神ファン。
    囲碁・将棋の大フアン、スポーツ大好き、
    太宰治に傾倒、自らも人間失格を自称、クラシックも好き、気の多い多趣味な、多酒味男、政治の腐敗に喝!

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